構造システムは、建築構造計算および各種構造計算用ソフトウェア(一貫構造計算、耐震診断計算、耐震補強、応力解析、振動解析など)のプログラム開発と販売を行っています。
事例レポート
地震発生後の建物検証で威力を発揮
- 本社社屋の地震時損傷予測で評価されたSNAPの実力 -
岩田地崎建設株式会社は、建築・土木・舗装・その他建設工事全般に関する企画から設計・監理・施工・マネジメントまでを行う総合建設会社です。
北海道を拠点とし、国内各地のほかにアジア、アフリカ、東欧、中南米などの海外にまで基盤を広げており、建築部門では、オフィスビル、ホテル、マンション、公共施設、神宮などの新築建物から既存建物の耐震診断・改修設計・工事まで、土木関連では、ダム、道路・トンネル・橋梁、上下水道、空港などを手がけられています。
また、地域密着を大切にしており、近年では、新千歳空港の国際線や北海道新幹線のトンネル、円山動物園のホッキョクグマ館、厚真町の災害復旧、札幌の再開発、ニセコのリゾート物件など北海道内の案件を多数手がけられています。
建築部門の設計を担当している島田 知典 氏にお話を伺いました。
SNAP導入の経緯
「2001年頃、本社社屋を建て替える際にチームが組まれ、実施設計から構造でかかわりました。
その際、制振部材メーカーから震度7クラスの地震を複数回経験しても制振部材を取り替える必要がないと聞いていましたので、ずっと地震の記録を取って解析をしておけば制振二重鋼管ブレースが繰り返し揺れを受けたときのブレースの損傷や建物の劣化・影響が分かり構造ヘルスモニタリングにもできると思い地震計の設置と、応答解析ソフトとして以前から『BUS』を使用していたこともあり『BUS』からデータ転送ができる『SNAP-LE※1』を導入しました。
それ以前には、構造システムの多質点系弾塑性地震応答解析ソフトを保有していました。
『SNAP』で、はじめて作成したモデルが本社社屋でしたが、当時は見よう見まねで、制振部材(制振二重鋼管ブレース)のデータベースもありませんでしたし、今のように画面上でマウスを使ったモデル入力ができませんでしたのでサポートに質問しながらの作業でした。」
自社社屋の検証
本社社屋 / モデル図
「2018年9月に北海道胆振東部地震が起こりました。会社から建物への影響調査と、もっと大きな地震が来た場合どのように壊れるか、どのような対応しないといけないか検討が求められました。
本社社屋は、CFT造地上10階建て、各階X,Y方向に制振部材を設置し、地震計は地表・建物1階床・R階床の3か所に設置しています。
1階の観測波を本社モデルに入れて、解析するわけです。
『SNAP』で、減衰定数や柱剛性を微妙に調整すると、R階の解析波が観測波に近づきます。
これで、実際の減衰定数など推定でき、『SNAP』で得られる知見は貴重です。
最大層間変位と減衰定数に関連のあることが分かってきました。
9月の地震では震度5強を観測しましたが、タイミング悪くSDカードがいっぱいで、余震も多く、本震のデータが上書きされてしまったため、江別地区(本社から距離約15km、震源地から同距離)の地震波から、『SNAP-WAVE※2』を使って、当社の地盤特性で増幅し、発生時の地震を想定して検証しました。
解析波のフーリエスペクトルを見ると、2階から4階の揺れはピークが短周期のところにありましたが、上の階に行くほど1.6秒ぐらいの長周期のときにもう1つピークが出て、周期が違うピークが2つあったことが分かりました。
7階から上にいくほどピークの影響が大きくなり、実際に7階から10階は書棚やロッカーがたくさん倒れ、解析結果はその倒れ方とも合っていました。
次に、さらに大きい地震が来たときにどうなるかを今回の地震波や余震を調整して解析したところ、大梁の塑性率・累積塑性変形倍率から塑性化の具体的な状況を把握できました。
また、二重鋼管ブレースの疲労損傷度から交換の要否も予測できますので、今後震度6強~7の地震がきても『SNAP』を使って観測波に基づく対応が可能です。
胆振東部地震後、北海道でも震度7クラスの地震が来ることを実感しました。
当社は、すでに制振構造の建物として成り立っていますが、『SNAP』と地震観測の組み合わせにより、地震計センサーを増やさなくても、各フロアの加速度・変位が予測可能ですので、当社のBCP対策にも、役立てたいと思っています。」
応答解析比較概念図 (動画あり)
サポートについて
「サポートは回答が早く、SNAP開発者や実務経験者によるサポートなのでとてもわかりやすいです。
教育機関も含めて多くの納入実績があると聞いていますのでそれなりにサポート件数も多いはずですが対応には満足しています。
また、バージョンアップ時の機能追加は初期バージョンと比較してとてもよいですね。
特に、最近のバージョンアップでスピードが速くなり、地震波の解析は一度に5、6個並列でできるのですごいです。」
高度な解析をより高速に解かりやすく
「SNAP」は、任意形状の構造物に対する部材レベルの弾塑性の動的応答解析、応力解析、増分解析を行います。
優れた操作性と高度な解析機能を備え、データ入力から解析結果の表示・出力まで、スピーディーに行えます。
64ビットアプリケーションのため解析を行う構造物の規模・データに制限はなく、マルチコアCPUを活用して複雑な構造物を高速で計算します。
豊富な自動計算機能により効率よく解析モデルを作成し、多彩な出力機能により解析結果を視覚的に把握できます。
超高層建物、制振構造、免震構造や木造など各種構造物の設計や耐震診断・補強に対応できる機能を備えています。
「SNAP」の機能紹介