構造システムは、建築構造計算および各種構造計算用ソフトウェア(一貫構造計算、耐震診断計算、耐震補強、応力解析、振動解析など)のプログラム開発と販売を行っています。
事例レポート
挑戦を支える、確かな信頼 「SNAP」
- 実プロジェクトで磨かれた信頼の構造解析 -
株式会社大林組は、「ものづくり」の技術と知見を結集させ、時代を象徴する総合建設会社です。
大林組が手掛けた北海道のスタジアムや、大阪で開催された展覧会の構造物にも「SNAP」が活用されました。設計本部 構造設計部の長屋圭一氏と清水大樹氏にお話を伺いました。
まだ機能が少なかった頃から「SNAP」を使い、今年で20年

― 「SNAP」が発売されたばかりの2005年からご利用いただいていますが、導入はどのような経緯でしたか?
長屋氏
当時は自社開発の「DREAM-3D」というプログラムを使っていました。
市販されているソフトウェアを使うことが検討されたときに候補に挙がったのが、当時の「SNAP」でした。
RC造建物におけるひび割れを伴う非線形挙動の表現や評価は、解析上も難しさがあります。
そのため、まずは非線形性の影響が限定的で、解析処理の安定性が確保しやすい免震構造の建物から使用を開始しました。
その後、降伏を伴い、より非線形性の影響が大きくなるレベルの建物の解析評価へと、段階的に適用範囲を拡大していきました。
まだ出来ないこともたくさんありましたが、足りない機能をご協力いただいて、どんどんパワーアップしていきましたよね。
「DREAM-3D」は、自分たちが入力した内容を第三者に説明するのがとても難しかったです。
数字だけが並んでいる入力データを見せても、よくわからないので。
「SNAP」は、他の作業者がデータを見ても状態がわかるという部分が、我々が持ってたものより飛躍的に進んでいました。
構造計算書偽造問題もあり、当時はそれも重要視されることだったと思います。
入力の手間を楽にするというより、引き継ぎや第三者に説明する必要性を我々は感じていて、それに応えてくれたというのが「SNAP」の使用頻度が高まった背景だと思います。
そのため当初は入出力のリクエストをものすごいたくさんさせてもらった気がします。
― 構造解析部門に最近ご依頼いただいたのは、どのような業務ですか?
長屋氏
受託でご依頼した北海道のスタジアムは、とにかくモデルが大きくなってしまって。
さらに、可動屋根のおかげで解析パターンも多く、たくさんのアウトプットから必要な部分だけを拾う機能もないと間に合わないと思ったのです。
モデル化は大林組で行いましたが、解析実行と結果データを拾う作業を主にお願いしました。
解析時間は同じかもしれないけれど、後処理って結構時間がかかるので、お力をお借りしたかったのです。
設計終盤には処理も膨大となり、到底我々だけではやりきれなかったと思います。
自分たちが見積もる作業時間より断然早くアウトプットを出してくれるので、重宝しました。
北海道のスタジアムの解析画面
「構造モデラー+NBUS7」は「SNAP」に慣れている人ほど使いやすい
― ご要望や、あると嬉しい機能などはありますか?
清水氏
「SNAP」は汎用解析プログラムだけあって、解析の細かさや自由度の高さというのが特徴だと思うんですが、その分モデリングが面倒臭くて。
節点を設定してつなぐ、昔ながらのやり方じゃないといけないのがもう少し楽になるとありがたいなと思っています。
Ver.8になって、だいぶ入力はしやすくなったと思います。
前は2カ所で断面を入力しないといけなかったのが一律化されたので、楽になりました。
― 直接「SNAP」に断面を入力して使われていますか?
清水氏
断面管理や荷重拾いは他社ソフトでやっています。
その節点や断面などの情報をエクセルで読んで、「SNAP」のシートに貼り付けていますね。
長屋氏
御社には、一貫構造計算ソフトも「BUS」を使っていただければ一貫でできますと言われてるのですが、なかなか進まなくて。
― 「BUS」の後継の「構造モデラー+NBUS7(以下+NBUS7)」は「SNAP」から弾塑性モデル化や応力解析などを取り入れているので、「SNAP」が一貫構造計算ソフトになったような印象を受けると思います。
清水氏
今世の中でST-Bridgeファイルに統合しようという動きがありますが、「+NBUS7」からST-Bridgeファイルは出力できるのですか?
― できます。ST-Bridgeは一貫構造計算ソフトの方がやり取りしやすく「+NBUS7」は双方向のリンクができます。
清水氏
使ってみないとわかりませんが、使用感がよければ僕が社内の布教者になるかもしれないですね。
― ぜひ使ってみていただきたいです。
清水氏
解析機能面で言うと、層せん断力-層間変形関係から串団子モデルを自動生成するプログラムは入ってると思うのですが、今は入力地震波レベルがどんどん大きいものを求められるようになってきている認識があるので。
魚骨モデルに変換する機能もあるとありがたいです。
魚骨モデルは、柱が剛強であれば特定の層だけ塑性化しても、塑性化していないところまで応力を再配分してくれる、柱の剛強度を評価できる縮約モデルです。
エネルギーに注目すれば任意の建物も精度が高い魚骨モデルに変換できるといわれているのですが、設計者が結果を出力して計算するにはなかなか大変な縮約方法なので、プログラムで自動化できると嬉しいです。
今だと部材系立体モデルで振動解析をするしかないので、1日2日待たないといけないような検討についても、設計としてちゃんと結果を得られるような高精度な縮約モデルを取り入れてもらえると嬉しいですね。
そういう最新の知見も盛り込んだエンジニアリング的な解析機能のバージョンアップは助かると思います。
― 部材系モデルだけではなく、質点系モデルほど単純ではない、高精度な縮約モデルも扱えるのは「SNAP」の強みですね。
超高層ビルでのSNAP解析画面
振動性状を四次元で可視化でき、各種固有値解析で分析できる
清水氏
研究的な機能ですが、伝達関数が欲しいですね。
長屋氏
「SNAP」で結果を出力してから「SNAP-WAVE」でフーリエ変換すればできそうだけれど。
清水氏
それと、応答解析結果をモード分解してくれると嬉しいですね。
長屋氏
でもすごく変わったなと思うのは、昔は最大値だけで、時間の流れを気にせず結果を見ていたのだけれど、今はそれが四次元になったというか。
時系列の中でのプレゼンをしてくれて「そういう揺れが起きてるならこうしようか」みたいな議論ができるようになった。
ソフトのアウトプットによって表現も、理解もできる。
変わってきてるなと、ここ最近思います。
こういう振動性状になってるというのを簡単に可視化してくれるので、ずいぶん助かります。
清水氏
アニメーションで見ると間違いも見つけやすいですよね。
吹っ飛んでる時は、最大値だけ見てもわからないので。
何が起きているのかどうしてもわからない時は、アニメーションを使っています。
目では評価できないので、最終的には数値に落とし込んでいかないといけないですが、そういうのがあると違いますよね。
長屋氏
導入当時にお願いしてたのは、複素固有値。意外と時間がかかっていました。
― 低次モードだけを算出できるソルバーの開発に時間がかかり、Ver.5までお待たせしてしまいました。
清水氏
確かに、固有値問題を解くサブスペース法とは異なるQR法が複素固有値解析では用いられていますね。
最近の発展だとやっぱり座屈解析は大きいですね。
幾何非線形がVer.8で増えましたよね。
幾何剛性マトリクスを組めるからできた機能なのだろうなと思っていました。
かなり高度な計算ができるようになったのかなと。
あれは線形座屈解析じゃないですか。
― 線形座屈解析もサブスペース法を利用しています。
サポートの手厚さが魅力のひとつ
― 今、サポートは主に構造解析部門が受けているのですが、どのような印象ですか。
清水氏
他社さんと比べると、修正ファイルも含めての修正が早いですね。
エラーが出るファイルを送ったらプログラムの修正ファイルを一緒に送ってきてくれるという対応が、他社さんと比べると早いと思います。
そういう対応は構造システムさんが一番手厚いかなと思ってます。
どうしてもダメな時は次のバージョンで、と言われるのですが、そうじゃない時も多いです。
すぐ直らないと、解析を回さなきゃいけないのに回らず困るので、設計者としてはありがたいです。
― お話を聞かせていただき、ありがとうございました。
高度な解析をより高速に解かりやすく
「SNAP」は、任意形状の構造物に対する部材レベルの弾塑性の動的応答解析、応力解析、増分解析を行います。
優れた操作性と高度な解析機能を備え、データ入力から解析結果の表示・出力まで、スピーディーに行えます。
64ビットアプリケーションのため解析を行う構造物の規模・データに制限はなく、マルチコアCPUを活用して複雑な構造物を高速で計算します。
豊富な自動計算機能により効率よく解析モデルを作成し、多彩な出力機能により解析結果を視覚的に把握できます。
超高層建物、制振構造、免震構造や木造など各種構造物の設計や耐震診断・補強に対応できる機能を備えています。
「SNAP」の機能紹介