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研究から実建物へ ― SNAPが拓く制震の未来

事例レポート

研究から実建物へ ― SNAPが拓く制震の未来
- 免震・制震装置開発と教育に広がるSNAPの可能性 -

日本大学 免制震構造研究室は「対地震システムの開発」や「部材の応答評価・性能評価」、設計者が容易に免震・制震構造物の設計が可能となる「簡易設計方法の構築」を中心に研究に取り組んでいます。
研究室で「SNAP」を長年使用いただいている教授の秦一平氏にお話を伺いました。

秦 一平 氏
日本大学 理工学部 建築学科
免制震構造研究室
教授・博士(工学)
秦 一平ハタ イッペイ
日本大学
創立
1889年
所在地
東京都千代田区九段南4-8-24
URL
https://www.nihon-u.ac.jp/

― 研究室の概要と、先生のご経歴を教えてください。

秦氏 当研究室では、主に免制振構造の研究を行っています。 免制振装置の実用化に向けて企業との共同開発をしています。
私は大学院生の頃からトグル制振装置の研究に継続的に携わってきました。 一度飛島建設に入社しましたが、大学への復帰を打診され、大学へ戻りました。 大学院の研究ではダンパーを効率的に利用する機構を用いた制振に関する研究をしていました。 この研究を通じて、実用化されることの喜びを知り、現在も研究を続けています。

― 取り組まれているテーマは、免制振装置関係の開発がメインですか?

秦氏 事例の一つに、約10年前に手掛けた高さ200mに及ぶ火力発電所の排気棟の制振改修プロジェクトがあります。
一般的に、こうした高層鉄塔構造物の制振では、塔の最上部にTMDを設置する手法が主流ですが、我々は鉄塔架構の脚部に着目しました。 足元の約20mの主柱に沿って、トグル機構を2つ重ね合わせて配置することで、主柱の軸変形を増幅させ、制振ダンパーを機能させるアプローチを実用化しました。 この制振技術は、すでに複数の案件で採用されており、その有効性と信頼性が実証されています。
また、最近実績が増えている手法としてトグル架構に回転慣性質量ダンパーを配置し、変形量の増幅に加えて質量効果を用いた制振システムがあります。 こちらも既に実用化されていて、日本大学理工学部の建屋「タワー・スコラ」にも採用されています。 この他にも、質量・減衰・バネ剛性を様々なパターンで組み合わせた制振装置の実験を進めており、中には実用化適用が決定したものも含まれています。 さらに応用的な事例として、床免震の機能で建物を制振することにも挑戦しています。 これらの研究開発が主要なテーマとなっています。


解析の目的に応じて幅広く活用している

― 「SNAP」が研究室で一番活躍している場面は?

開発したDM付TMDシステム

開発したDM付TMDシステム

秦氏 研究室では既存の装置を使うことが多いので、それをどう組み合わせるか確認するために、立体フレームを組んだら「SNAP」でモデルを構成して制振効果の検証をしています。 既に「SNAP」に組み込まれたダンパー要素等を駆使して、開発中の制振装置を再現できるようにモデル化を行い、解析で検証しているというのがメインですね。
また、新しい装置の使い方や仕組みなどの構想が浮かんだ時は、まず「SNAP」で解析しています。 研究室で開発した固有値解析プログラムで思い描いた理論ができているかを確認してから、「SNAP」の時刻歴応答解析で制振効果を見るという使い方をしています。
あとは、開発した制振装置が実際の建物に採用されることになったらまず立体モデルを作ってプッシュオーバーを行い、質点系モデルを作成します。 そこからパラスタして、結果を立体モデルにフィードバックして設計を進めるというように、解析の目的に応じて制振装置の詳細なモデルから建物全体の立体モデルまで、「SNAP」を幅広く活用しています。

― M・C・Kが複合されたダンパーのモデル化でご活用いただいているという点は、先生の研究活動の特徴でもあり、大変興味深いですね。結果を確認しながらパラメーターのチューニングなども行われるのでしょうか?

秦氏 はい。 例えば減衰特性では荷重速度関係が指数関数で定義されますが、係数を複数パターン設定するケースもよくあります。 「SNAP」はモデル化機能の汎用性が高いので、実験前後での検証解析を進める上では、使い勝手が良いですね。


発想の自由度を最大限に引き出す、「SNAP」ならではの独自性

― 「SNAP」を長くご利用いただいておりますが、これまでの歩みについてどのような印象をお持ちでしょうか。

秦氏 要望は十分反映していただいている上に「SNAP」にしか使えない機能も結構あるので、手放せないですね。
複素固有値解析ができるように入れてもらって、回転慣性質量系もすぐ対応していただきましたし、そういった点でも時代の流れに沿って対応してくれてるので、使いやすいと思います。
僕が最初に使ったころは、テキスト入力だったんです。 入力を間違えてても、グラフィックにしないとなかなか気づかないので、その点はすごく楽になりましたよね。 画期的に良くなったとしか思えないです。
パソコンの性能も上がったかもしれないけど、昔に比べて計算もすごく早くなりましたよね。

― 最新の研究にはほとんど「SNAP」を使っていますか?

建物への適用事例として検討したモデル

建物への適用事例として検討したモデル

秦氏 そうですね。実施物件ではだいたい使います。 就職したら使うので、学生にも研究で立体モデルを組ませて検討して、僕はそのモデルがどれくらい効果あるのか確認したり。 用途によって色々な使い方をしますが、いずれにせよ立体モデルは組んでますね。 パラスタみたいにやるのはプッシュオーバーして質点系に変換して解析。 最終を立体でやるっていうのがうちでは多いですね。

― 「SNAP」は立体空間の中に質点系モデルをそのまま置けるので、次元の違うモデルが幅広く伝えられるところも魅力の一つです。

秦氏 そうですね。ある事例でも、複数モードを制御するTMDを入力していますが、まさに質点系を並列してモデル化しています。 実験では質点系モデルで合わせることが多いですね。 例えば8層の試験体ではTMDの簡易モデルが載っていますが、実験と同じ地震波入力を「SNAP」の立体モデルに行って、応答結果が実験にどれくらい整合しているかを確認するなど、そういった使い方をしてます。

― 「SNAP」のような汎用ソフトを授業や教育の場で使うことは、どのように思われますか?

秦氏 構造系の仕事をしたい学生は覚えた方がいいと思います。 今は、大学院の授業で3週間ぐらい使ってまずは操作を理解してもらうのがメインです。 例えば校舎の建物の簡易的なモデルを作らせて、そこから静的増分解析、モデル化をして、せん断モデルにするのか曲げせん断モデルにするのか?というところまでをやってます。 うちの大学院生は研究で使うので、必ず覚えてほしい。
立体モデルを扱うことに関しては、後々、免震の設計法や論理の理解につなげる為にも、しっかり解説しています。 そして、計算結果の妥当性を確認する方法などを実習しています。 免震制振は当たり前の技術になってきたので、将来構造設計に行くなら時刻歴応答解析をある程度使えないといけないと思います。


作りたいものの実現のためにもソフトの使い方を学ぶ

― 学生の皆さんはどのような姿勢でソフトを使っていますか?

秦氏 やらなくちゃいけない、覚えなくちゃいけないことっていう認識はあると思いますね。 1回慣れれば自分で作りたいモデルを作れるようになりますし。 うちの学生も、パッシブ制振マニュアル等を参考にして、検討したいモデルを自由に作成したり修正したりしていますね。 アドバイスしたらその通りにするくらいには使えてるので。 多分、興味あるから理解は早いと思います。
取扱説明書を見てもわからないことが出てきたら、参考文献が載ってるからそれを見れば良いと言っています。 複雑な設定になった時はうちの助手に質問したり、設定やモデルなどアドバイスするので。 そういう会話が学生が育つ環境に繋がるのだと感じます。 集中してそういうことができる環境だから、覚えるのは早いんじゃないかなと思いますね。

― 非常に理想的な使い方をしていただいていると思います。まずマニュアルは置いておいて、操作していく中でレベルを上げていくというのが私は近道だと思っています。授業を通して、そういった状況になっているのは大変素晴らしいと思います。
お話を聞かせていただき、ありがとうございました。



高度な解析をより高速に解かりやすく

SNAP」は、任意形状の構造物に対する部材レベルの弾塑性の動的応答解析、応力解析、増分解析を行います。 優れた操作性と高度な解析機能を備え、データ入力から解析結果の表示・出力まで、スピーディーに行えます。
64ビットアプリケーションのため解析を行う構造物の規模・データに制限はなく、マルチコアCPUを活用して複雑な構造物を高速で計算します。
豊富な自動計算機能により効率よく解析モデルを作成し、多彩な出力機能により解析結果を視覚的に把握できます。
超高層建物、制振構造、免震構造や木造など各種構造物の設計や耐震診断・補強に対応できる機能を備えています。

「SNAP」の機能紹介 



高度な解析性能と優れた操作性の調和




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