構造システムは、建築構造計算および各種構造計算用ソフトウェア(一貫構造計算、耐震診断計算、耐震補強、応力解析、振動解析など)のプログラム開発と販売を行っています。
事例レポート
詳細な解析による耐震性能評価
- 木造ラーメン架構の実験検証解析で証明されたSNAPの実力 -
平成12年の建築基準法改正による性能規定化体系の導入により、木質材料を用いた耐火建築物が認められ、大規模建築物を木造で建設することが可能となりました。
また、平成22年の「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」の施行に伴う木造化推進施策により、木材利用による多様な建築物が建設される可能性が広がっています。
このような機運を背景として、現在、木質構造に関する技術開発や設計基準整備が積極的に推進されています。
今回は、建築物及び建築要素の設計システムを合理的に追求する視点から、木質構造物の技術開発と構造設計を実践している株式会社日本システム設計の事例を紹介します。
業務内容
株式会社日本システム設計では、個別プロジェクトの設計監理業務とは別に、建築物を合理的に設計・施工・運用するための構造システム、建築構成要素などの開発業務、およびこれらに関連するコンサルティング業務(以下、「開発設計業務」)を行っています。
開発設計業務では、これまでに民間企業や法人・団体等の依頼を受け、工業化住宅の構造方法や免震・制振構造に関する技術開発を行い、開発技術に係わる各種の認定や評定を取得するなど数多くの実績を残しています。
開発設計業務の中では、実大構造物を対象とした各種実験計画を策定し、構造物を詳細にモデル化した実験結果の検証解析も行っています。
開発設計業務を担当している開発設計室の山本 徳人 氏にお話を伺いました。
SNAP導入の経緯と評価
「木質構造では、接合部の力学特性が全体挙動に及ぼす影響が大きいため、木質構造の解析では、接合部の力学挙動を詳細にモデル化する必要があります。
そのため、専用の解析プログラムを自社開発し、接合部の力学挙動を複数の弾塑性バネに置換して、木質構造物の弾塑性解析を行っていました。
しかし、木質構造建築物は、部材点数が多く複雑な立体形状を有するものも少なくないため、自社開発プログラムでは対応が困難な場合も発生し、入出力データの操作性に優れ汎用性が高い市販の解析プログラムの導入が必要となりました。
このような要求を満足する市販の解析プログラムを探した結果、木質構造の解析に最も利便性が高い解析プログラムは『SNAP』であると判断し、2004年に導入しました。」
木造ラーメン架構の解析例
山本 氏より、『SNAP』を使用した解析事例を紹介していただきました。
門形木造ラーメン架構の実験
「都市部の木造住宅では、建物内部に車庫(いわゆる「インナーガレージ」)が計画される場合が多いのですが、狭小間口などの理由により、構造用合板などを用いた耐力壁を配置できないため、図1に示すように、木造ラーメン架構を配置することにより、このような建築計画を実現している設計事例が多数存在します。
木造ラーメン架構には、例えば、図2に示すように、専用の特殊接合金物を用いて柱脚部と柱はり接合部にモーメント抵抗機能を持たせた一方向ラーメン架構(開発元:株式会社ストローグ)が適用されます。このような接合形式を有する木造ラーメン架構の構造解析では、接合部を完全な剛接合ではなく接合部内の回転を考慮したモーメント抵抗接合部(いわゆる半剛接合)としてモデル化する必要があります。
今回、この木造ラーメン架構のモデル化方法を検証するために実施された実験では、試験体は、図3のように、1層1スパンの門形木造ラーメン架構とし、柱脚部と柱はり接合部のそれぞれの接合方法は図2の通りです。試験体数は3体とし、実験は漸増変位振幅の正負繰返し静的水平載荷をはり中央部に与えて実施しました。
解析モデルは、図4のように柱とはりをそれぞれ線材要素に置換し、接合部にはスプリング要素を配置した平面フレームモデルです。接合部のスプリング要素には、別途実施した実大接合部の実験結果に基づいて、接合部のモーメント抵抗挙動をモデル化した復元力特性を与えています。この解析モデルを用いて、一方向載荷による増分解析を行いました。
図5のように試験体3体の実験結果と解析結果を比較すると、解析結果は実験結果を実用上十分な精度で予測可能です。
今回のように、木質構造接合部の力学挙動をモデル化する場合には、本プログラムは大変有用な解析ツールであると思います。」
図3:門形木造ラーメン架構の実験概要図※
図4:門形木造ラーメン架構の解析モデル
図5:実験結果と解析結果の比較
※ 提供:株式会社ストローグ
高度な解析をより高速に解かりやすく
「SNAP」は、任意形状の構造物に対する部材レベルの弾塑性の動的応答解析、応力解析、増分解析を行います。
優れた操作性と高度な解析機能を備え、データ入力から解析結果の表示・出力まで、スピーディーに行えます。
64ビットアプリケーションのため解析を行う構造物の規模・データに制限はなく、マルチコアCPUを活用して複雑な構造物を高速で計算します。
豊富な自動計算機能により効率よく解析モデルを作成し、多彩な出力機能により解析結果を視覚的に把握できます。
超高層建物、制振構造、免震構造や木造など各種構造物の設計や耐震診断・補強に対応できる機能を備えています。
「SNAP」の機能紹介