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事例レポート
詳細な解析による耐震性能評価
- 土壁架構の実験検証解析で証明されたSNAPの実力 -
古来より日本の建築材料として使われてきた「木」。日本には多数の木質構造物があります。
阪神・淡路大震災では、多くの木質構造物に被害が生じ、その後、木質構造に関する実証実験や研究が増えました。
過去において経験的に評価されていた接合部、貫、壁などの耐力、変形性能が工学的に解明されつつあり、これらの研究成果から新しい木質構造の可能性が広がっています。
今回は、木質構造物の解析を中心に、木材工学の視点から木質構造の研究を行っている京都大学生存圏研究所生活圏構造機能分野の事例を紹介します。
研究の目的
木材は、地球上で最も環境負荷が小さく、理想的資源循環系を形成可能な唯一の工業材料です。
京都大学生存圏研究所生活圏構造機能分野では、木材を構造材料とした木質空間構造(建物、橋、その他)の構造耐力発現機構を解明し、生活圏環境に出来るだけ負荷をかけない自然環境調和型木質空間を創成することを研究の目的としています。
今回お話を伺った小松 幸平 教授は、木質構造の接合部に関して造詣が深く、2009年に刊行した日本建築学会「木質構造接合部設計マニュアル」では、編集小委員会の主査を務められています。
SNAP導入の経緯と評価
土壁架構の解析
小松教授に最近の解析事例を紹介して頂きました。
なお、本解析事例は、WCTE(WORLD CONFERENCE ON TIMBER ENGINEERING)2010で発表しています。※1
実験結果と解析結果の比較
タイプ1:SNAP解析モデル
実験結果と解析結果の比較
タイプ2:SNAP解析モデル
実験結果と解析結果の比較
タイプ3:SNAP解析モデル
実験結果と解析結果の比較
「日本の伝統建築の構法である土壁架構について、3タイプの試験体の実験を行いました。
タイプ1は、3段の貫を配置した1スパン(980mm)の土壁架構、タイプ2は、中間に柱を配置した2スパン(2×980mm)の土壁架構です。
タイプ3は、試験体図に示すように、土壁の小壁を配置した中間に立貫を持つスパン1960mmの架構です。
試験体の総数は、各タイプ3体ずつの計9体です。
解析モデルは、接合部や土壁等の復元力特性を設定したモデルによる解析です。
従って、柱-貫接合部の曲げの復元力特性、柱-土台、柱-桁接合部のほぞによる貫効果とダボ効果を考慮した曲げの復元力特性、土壁のせん断力の復元力特性を設定する必要があります。
柱-貫接合部、柱-土台、柱-桁接合部の非線形の復元力特性は、小松研究室で行った既往の研究から求めました。
土壁の復元力特性を土壁単体の実験から求めるのは困難です。
そこで、土壁が付いた試験体から得られた層せん断力-層間変位から、フレームのみの試験体の層せん断力-層間変位を引いて、土壁単体の復元力特性のモデル化を行いました。
各接合部の曲げ、土壁のせん断力の履歴特性は、松永、曽田、宮津の提案したNCLモデルです。※2
解析は、接合部の曲げ、土壁のせん断力の履歴特性を『SNAP』の「木造用NCLモデル(WE4)」でモデル化を行い、正負交番載荷による静的増分解析を実行しました。」
「1~3までの各タイプのSNAPによる解析モデル図と、試験体3体の実験結果(層せん断力-層間変形角)と『SNAP』による解析結果を示します。 解析結果の図から、実験結果と解析結果がほぼ一致していることが確認できました。」
※1 WCTE2010 「PREDICTION OF NON-LINEAR LOAD-DEFOMATION CURVES OF VARIOUS TYPES OF MUD SHEAR WALLS SUBJECTED TO LATERAL SHEAR FORCE」 Kohei Komatsu、Akihisa Kitamori、Kiho Jung、and Takuro Mori
※2 松永裕樹、曽田五月也、宮津祐次「木質構造物の復元力特性のモデル化と動的解析への適用」 2007年日本建築学会関東支部研究報告集
高度な解析をより高速に解かりやすく
「SNAP」は、任意形状の構造物に対する部材レベルの弾塑性の動的応答解析、応力解析、増分解析を行います。
優れた操作性と高度な解析機能を備え、データ入力から解析結果の表示・出力まで、スピーディーに行えます。
64ビットアプリケーションのため解析を行う構造物の規模・データに制限はなく、マルチコアCPUを活用して複雑な構造物を高速で計算します。
豊富な自動計算機能により効率よく解析モデルを作成し、多彩な出力機能により解析結果を視覚的に把握できます。
超高層建物、制振構造、免震構造や木造など各種構造物の設計や耐震診断・補強に対応できる機能を備えています。
「SNAP」の機能紹介