構造システムは、建築構造計算および各種構造計算用ソフトウェア(一貫構造計算、耐震診断計算、耐震補強、応力解析、振動解析など)のプログラム開発と販売を行っています。
事例レポート
超音波探傷試験の結果を耐震診断に反映
- 混構造のS造部分もRC造・SRC造と同じデータで耐震診断できるDOC-S -
株式会社ジャストは1972年に超音波による建築鉄骨溶接部の検査会社として業務を開始しました。
その後、既存建築物を対象としたコンクリート内X線探査・設備配管劣化調査業務、さらに建築物の調査診断・耐震診断業務、土木構造物の調査業務を加え、業務範囲を拡大しています。
現在では、非破壊検査技術を駆使した建築物・土木構造物の調査から診断までを一貫して行うことのできる社員数363名(2015年1月1日現在)の調査専門会社として日本全国はもとより海外でも活動しています。
また、技術開発にも積極的に取り組んでおり、鉄骨柱基礎アンカーボルト長の非破壊検査方法、新しい原理に基づいた超音波ボルト軸力計、建築物の損傷を検知するスマートAEセンサーなどの実用化が進んでいます。
建築物の耐震診断業務を行っている横浜、名古屋、大阪の3拠点ではDOCシリーズ※1を導入しており、多くの診断物件に対応しています。
名古屋営業所構造分室の大里 久伸 氏にお話を伺いました。
DOC-S導入の経緯
「鉄骨造建築物の耐震診断を行う際に、DOCシリーズのほか、他社プログラムの中から、その建物に適したプログラムを選択して、耐震診断を行っています。
ソフトごとに特長がありますが、DOCシリーズの共通点として、データ作成・管理、補強計画、補強設計が1つのデータで連続的に計算できることが挙げられます。
特に補強計画時において、補強部材の断面や配置を容易に変更できるため、多くの補強ケースを試行錯誤できる利点があります。
制約された時間の中で、より良い耐震補強計画が可能になります。
また、入力マニュアルがBUSシリーズと共通となっていますので、BUSシリーズ※2を使用していれば、基本的なデータ入力を同様にできる上、『DOC-S』で、S造、RC造、SRC造を問わずデータ作成を行うことができます。
このようなソフトが35万円(定価)であったことが『DOC-S』を採用するきっかけになりました。」
溶接欠陥を有するはりフランジ継手
図1 フェイズドアレイ超音波探傷の探触子と検出例
「鉄骨造建築物の耐震診断に最も多く適用される『耐震改修促進法のための既存鉄骨造建築物の耐震診断および耐震改修指針・同解説』が2011年に改訂され、“溶接欠陥を有する梁フランジ継手の耐力及び梁端の靱性指標”が新たに示されました。
当社では、超音波探傷試験による梁端溶接部の調査を行い、その結果を反映した耐震診断を行っていますが、当初はどのプログラムも対応していなかったため、別途計算した値を直接入力することで対応していました。
しかし、『DOC-S』ではこの改訂点にいち早く対応し、欠陥高さ・欠陥長さを指定すれば、指針に準拠した計算値が算出されます。
図2は、最近、建築の分野でも適用され始めてきたフェイズドアレイ超音波探傷試験(図1)による板厚9mmのレ形部分溶込溶接部の試験の結果です。
縦軸が板厚方向の距離を示し、横軸は探触子からの距離を示します。
水色線部分が開先形状をオーバーレイしたものです。図2よりルート部のエコーと不溶着部の上端エコーが確認され、不溶着高さが2mmであることが確認されました。
これを受け、プログラムの入力は欠陥指示高さ2mmの全線欠陥として入力しました(図3)。
超音波探傷試験による欠陥の検出を、効率的に耐震診断に反映することができ、大変重宝しています。」
図2 PAUTによる鉄骨断面画像例
図3 DOC-Sの操作画面
混構造建築物の耐震診断
図4 混構造の例
「『DOC-S』は屋内運動場に見られるように、下部が鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造で上部が鉄骨造といった構造種別が途中で切り替わる建物の取り扱いはもちろんですが、主体構造が鉄骨造で平面の一部に鉄筋コンクリート造が存在する建物についてもモデル化が可能です。
例えば、鉄骨造で、建物の一角に鉄筋コンクリート造の金庫室を有する銀行建物です(図4)。
鉄骨造と一体となっているため、混構造における剛性計算や構造毎の耐震診断計算を行う必要があります。
耐震診断基準では、鉄骨造と鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造を同時に耐震診断するプログラムは存在せず、『DOC-S』でもできません。
しかし、作成した同じデータを用いて鉄骨造部分は『DOC-S』、鉄筋コンクリート造・鉄骨鉄筋コンクリート造部分は『DOC-RC/SRC※3』にて診断できるため、効率的に診断や補強計画・補強設計を行うことができます。
ここがDOCシリーズの優れている点と考えます。」
煩雑な鉄骨造の耐震診断業務を広範囲にサポート
「DOC-S」は、鉄骨造建築物の耐震診断から補強設計業務まで幅広くカバーするソフトです。
経年変化を考慮して断面欠損や有効断面積低減、保有耐力接合を確認し、部材接合部、補強設計の補強部材などを考慮できます。
また、建物重量集計、応力計算、剛性率、偏心率の計算などサポート計算機能も充実しています。
混構造建築物では、RC/SRC階の入力も可能で、建物形状通りに保有水平耐力計算を行います。
「DOC-S」の適用範囲外となる診断階は各指標等を直接入力することで建物全体の診断結果をまとめることができます。
DOCシリーズ※1はデータが共通のため、「DOC-RC/SRC※2」や「DOC-3次診断※3」と連携させることで、さらに効率良くお使いいただけます。