開発コラム ライトの設定 スポット光源の実例
  • Last Updated 2019/07/03

開発コラム スポット光源の実例 (ライトの設定)

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スポット光源とは


スポット光源は光源の位置と光束の方向がはっきりとしているのが特徴です。
実際のスポットライトと同じように特定の物体を浮き出させたい場合に使います。
スポット光源に特有なパラメータは光源の位置、光束の方向、光束の広がりです。


スポット光源のモデル図

本ページのレンダリング例には以下のモデルを使いました。
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スポット光源の使い方

  ここでは以下の3項目に分けてスポット光源の使い方を紹介します。
  ●定数域(傘のa)を変えてみる:光束の広がりの内、定数域を変化させると光の状態がどう変わるかを示します。
  ●減衰域(傘のb)を変えてみる:光束の広がりの内、減衰域を変化させると光の状態がどう変わるかを示します。
  ●スポット光源+間接光の表現:スポット光源に環境光や補助光源を加え、間接光の表現を試みます。
  また、環境光や点光源と組み合わせてより実感的な光の表現を考えてみます。


定数域(傘のa)を変えてみる

スポット光源の光は光源を離れるのに伴ない、照らす範囲が広がっていきます。この広がりを「光束の広がり」と呼びます。
「光束の広がり」の中心(光束の方向)の近くでは光は一定の強さであり、離れるにつれて光は弱くなっていきます。
一定の強さの範囲は中心からの角度で示され、定数域(傘のa)で定義されます。
弱くなっていく範囲も中心からの角度で示され、減衰域(傘のb)で定義されます。
まず、この定数域(傘のa)の効果を見てみます。

●定数域を変えてみる[減衰域(傘のb)=定数域(傘のa)]

傘のa

10°

20°

40°

60°

減衰域(傘のb)を変えてみる

実物のスポットライトが照らす範囲の境界は1の例と違い、多くの場合、徐々に暗くなります。
それを表現するために減衰域(傘のb)があります。 定数域(傘のa)を20°に固定して減衰域(傘のb)の効果を見てみます。

●減衰域を変えてみる[定数域(傘のa)=20°]

傘のb

20°

40°

60°

80°

※材質の環境光は0.0です。
※減衰率のパラメータはkc=1.0、kl=0.0001、kq=0.0に固定しました。

 

スポット光源+間接光の表現

今までの例では光が直接当たっていない部分は真っ暗でした。
これは間接光の効果が考えられていないからです。 ここでは幾つかの方法で間接光の効果を表現してみます。
(以下の例では直接光を、定数域(傘のa)=20°、減衰域(傘のb)=40°に固定しています。)

1.環境光を使う

オブジェクトの材質に「環境光」を設定する事で光が当たらない物体もある程度見えるようになります。
ただし、環境光は
「当たっている光の強さに係わらず一定割合で物体が見える(光を発している)ようにする」
という考え方ですので明暗はやはり単調です。

2.回折、散乱による間接光を表現する

ライトなどの照射面の縁で起こる光の回折と空気の分子による散乱を表現する補助光源として、
光源の近くにごく弱い点光源を配置します。

3.拡散反射による間接光を表現する

物体表面での拡散反射を表現するための補助光源として、光束の方向上にある椅子の座面上にごく弱い点光源を配置します。

●間接光のシミュレート

設定なし

環境光
[全ての材質で0.2]

回折、散乱による間接光
[強度:0.2]


回折、散乱の現象は物体の縁や空気のある部分ではどこでも起こります。
この例では光の強い部分が一番効果が大きいと考えられるので、光源の近くに設定しました。

拡散反射による間接光
[強度:0.2]

拡散反射も(完全黒体、完全鏡面を別にすれば)光が当たる全ての面で生じます。
この例では、光束の方向上にある椅子の座面が一番明るく、拡散反射の効果が大きいと考えられるので座面上に設定しました。

4.2と3を組み合わせる

2と3を組み合わせて使います。
間接光の強度を変えて2種類設定しました。
光源を増やすと、環境全体として光が強くなるため、物体各部分のコントラストが小さくなり、平板な感じになります。
それを避けるために光源を増やしたら、各光源の強度を小さくするかか減衰率を大きくして、明暗のアクセントが付くようにします。

5.4を設定した上で特定の材質に対して環境光を設定する

4の設定に加え、椅子の脚と壁面のパネル(どちらも白)に環境光を設定しました。
人間の視覚が認識する画像は、眼球が焦点距離、露出を変えて観察した複数の画像を脳で再構成したものです。
これは光学的な条件だけで画像を記録するカメラ等と違い、光学の法則に従わない部分があります。
例えば、真夏の戸外から暗い室内を見る場合を考えます。
カメラでは、戸外に露出を合わせると室内は真黒になってしまい、室内に露出を合わせると戸外は真っ白に飛んでしまう場合でも、
人間の視覚は室内も戸外もそれなりにディテールを認識できる程度の明暗の差として全体を認識します。
これは脳が、露出を上げて認識した室内の画像と露出を下げて認識した室内の画像を合成して認識するためです。
この例が現実の室内だとしますと、人間は眼球の露出をコントロールして観察する事で椅子の脚や壁面のパネルが純白である事を認識します。
したがって、仮に照明が薄暗くて、白の部分が光学的には暗い灰色に見えても、脳はそれを純白と思える程度に明るく感じます。
ところがこの例は物理的には単なる絵ですから、この絵を見せられただけでは灰色は灰色にしか感じられません。
この場合、白の部分は環境光を多くして常に他の物よりやや明るくみえるようにした方が、
視覚の認識する画像に近くなる(白を白と感じる事ができる)と考えられます。
(実際の脳はさらに複雑で、観察した画像とその中の対象について持っている記憶との照合もします。
例えば、コンクリートの壁面を見たことのある人がこの例を見た場合、
記憶の中のコンクリートの壁面の明るさ、色と白の部分を比較する事で白の部分の明るさや色を推定してしまいます。

●間接光のシミュレート(組み合わせ)

全ての材質の環境光

0.0

白い材質のみ:0.3

間接光

なし

-

0.1

0.2


参考資料

スポット光源の計算式
スポット光源の実際の計算例
スポット光源のパラメータ

注:本コラムはDRA-CAD11 Ver.11.0.1.7 時点での機能を紹介しています。
その後のバージョンでは変更されている場合もありますのでご了承ください。