コラム 鉄骨ブレース工法による耐震補強
  • Last Updated 2010/10/07

開発コラム  鉄骨ブレース工法による耐震補強

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耐震補強とは

建物の耐震性能を向上させることを耐震補強といいます。
具体的には、建物の外部や内部の壁、柱の耐力や剛性、ねばり強さを向上させ、建物の耐震性能を高めます。
補強構法には様々な方法があり、その効果も異なります。
耐震診断の結果に基づいて、適切な補強構法でバランス良い補強計画をする必要があります。
また、コスト・工期・整合性・施工性等を総合的に判断し、最適な方法を選定します。


耐震補強構法の種類

耐震補強構法には一般的に大きく分けて以下の3つの方法があります。

構法

耐震補強

制震補強

免震補強

目的

地震力に抵抗

地震エネルギーの吸収により地震力の低減

地震入力をかわし地震力の大幅低減

手段

強度抵抗部材の配置、靱性改善

エネルギー吸収装置(ダンパ)の配置

免震装置の配置

部材

強度抵抗:壁、ブレース、フレーム増設等
靱性改善:繊維補強、スリット等

弾塑性ダンパ、オイルダンパなど

積層ゴム、滑り支承など

特徴

耐力不足や高い安全性の確保の程度に応じて補強構面が増大

耐震補強に比較して、補強構面が少ない

高い耐震安全性や機能維持確保が可能


鉄筋コンクリート(RC、SRC)造系の耐震補強

以下は鉄筋コンクリート系の構造物で一般に行われている耐震補強工法です。

工法

具体例

鉄骨による補強工法

外付け鉄骨ブレース工法
鉄骨ブレース工法 V型 K型

RC壁による補強工法

耐震壁増設、開口付き耐震壁増設、腰壁・垂れ壁のスリット、
増打RC壁、RC壁の開口部閉鎖

鋼板を用いた補強工法

壁の鋼板補強、柱・梁の鋼板巻き補強、床の鋼板接着補強など

炭素繊維を用いた補強工法

柱・梁の炭素繊維巻き、床・壁の炭素繊維貼り補強など

その他の補強工法

基礎の補強:基礎の拡大、杭の補強・増し打ちなど


耐震壁や鉄骨ブレース等の耐震壁を増設する事で耐力性能を高めることができます。
また、独立柱を炭素繊維や鋼板などで補強する方法で変形性能を向上させることができます。
補強計画は、建物の構造特性や設置可能な場所の制約などにより、これらを組合せて行います。
中でも鉄骨ブレース工法は最も一般的で、広く採用されています。


鉄骨ブレース工法 V型とK型の比較

構法

V型

K型

W型(参考)

長所

スッキリとした仕上がり
開口が取りやすい
他のタイプより施工しやすい

座屈止めがあるため他のタイプより細い鋼材が使え、狭い梁幅の下にも取付け可能
特に古い基準で建てられた細い梁の建物に適する

スパンが長く、V型では梁の中央部に座屈が発生して曲げ破壊が起きる場合に使う

短所

座屈止めが無い分、大きい鋼材になり、梁面からはみ出る場合がある
鋼材の厚みを大きく取ることで、可能な限りプレース幅を抑える必要がある

座屈止めがあるため開口が制限される
カバーを付ける場合、複雑な形状なので施工に手間が掛かる

V型と同じように、梁幅がある程度ないと設置が難しい
鋼材が太くなる傾向にあり、見た目に威圧的になる

コスト

構造が簡単な分だけ経済的

構造が複雑な分V型よりコスト高

コスト的には一番高くなる


RC耐震壁と鉄骨ブレースの併用

同一方向の補強で、鉄筋コンクリート壁と鉄骨ブレースの併用は避けてください。
これは「鉄筋コンクリート壁」と「鉄骨ブレース」の耐震効果にタイムラグが生じるため、併用した場合は、両者の合計が期待したとおりの結果にならないためです。
やむをえない場合は、靭性(じんせい)指標を考慮して使用してください。


AS-耐震補強鉄骨詳細図について

DRA-CADアソシエイト会員専用オプションコマンドとして、 AS-耐震補強鉄骨詳細図コマンド を公開しました。

このコマンドは鉄骨ブレースによる耐震補強の詳細図を作図する機能で、V型とK型に対応しています。
過去、鉄骨ブレースと4方枠の接合部の詳細については、いろいろな詳細が考えられています。
このコマンドで作成される接合部の詳細は、開発者が実際に耐震補強に使用したもので、次のような設計思想から作成しています。
補強ブレースの1建物当たりの鉄骨量は少ないために、鉄骨加工工場は必ずしも高レベルの工場が加工するとは限らないと想定し、
補強ブレースと4方枠の交点の溶接を避けて、H.T.Bによる接合にしています。
分力となる4方枠の応力が、ブレース部分より少なくなるためにその部分での溶接としています。
4方枠は、溶接しないで通す接合にすると加工の精度は上がると思いますが、ブレースとの溶接性が悪くなる事が予想されます。
ただし、上記の溶接の不安が無ければ、その部分は、作成した図を適宜、変更して下さい。
軸組図用と詳細図用の選択が有り、軸組図用の指定では、細かい寸法や部材名称を省略して、シンプルな図が作成できます。
又、このコマンドにより補強計算のアンカーやスタッドの本数の確認が可能です。


作図例

以下の図面が2クリック(ハンチありの場合は3クリック)で作成できます。