事例レポート
- 九尺設計株式会社は、「構造界を担っていく若者を教育していこう」という趣旨から有限会社青木設計工房、株式会社コア設計、糟谷裕一構造設計の3社合併により設立された構造設計事務所で、中高層マンションや官庁施設などの構造設計と耐震診断を主に行っています。
1984年に発売された初代の『BUS-0』から導入され、現在もBUS-5(以下BUS)をメインに使われている青木稔氏にお話を伺いました。
他社のソフトと保有水平耐力を比較
九尺設計 株式会社 青木稔 氏 |
九尺設計 株式会社 |
設立 2009年5月 代表者 青木稔、渡邉昭彦 所在地 愛知県名古屋市中区新栄2-42-32 URL http://www.9jaku.com |
- 「当社では、BUSのほかにも他社の一貫構造計算ソフトを所有していますが、基本的には、お客さんから指定されたソフトを使用して設計を行っています。
以前、BUSと他社のソフトの保有水平耐力を比較したことがあります。大まかにいうとBUSのほうが保有水平耐力が大きくなる傾向があります。
RC造地上18階建て、X方向9スパン、Y方向1スパンの建物では、経済効果だけ見ると鉄筋量はBUSのほうが数%少なくなりました。18階建ての建物ですから、当然、振動解析を標準波3波で行い、問題ない性状であることを確認しています。
BUS-5の伏図・フレーム図
RC造地上7階建てのマンションで、X方向だけですが、スパン数を変更して比較したことがあります。というのも、私は基本的にBUSしか使わないので、BUSで仮定断面を出して、BUSで必要保有水平耐力を確認してから、他社ソフトを使用している担当者に引き継ぎました。しかし、必要保有水平耐力が出ませんでした。
BUS-5の断面算定・検定図
BUSのマルチスプリングモデルは、他社のソフトのM-Nモデルで解析した保有水平耐力値に対して、だいたい数%程度の余力を持っていることが分かりました。
ケースによっても異なりますが、保有水平耐力の一番大きな差の要因は、BUSのマルチスプリングモデルに置き換える方法により、ひび割れ耐力の違いだと感じています。そのため、7階建ての建物でも、解析モデルによる影響が出ると思います。
また、同じ高さの建物でもスパン数を多くするとマルチスプリングモデルとM-Nモデルとで数%以上の保有水平耐力のアップが期待できます。
引張側で柱にヒンジができてしまったら、当然変形は進んでしまうということが起きている。やはり、RC造では、ひび割れ耐力をどう追いかけているのかというのが一番大きく違うのではないでしょうか。
S造建物でも比較しましたが、解析モデルによる結果の相違は、ほとんどありませんでした。
ソフトや解析モデルによってかなり差があることは、あまり知られていないと思いますが、設計者の選択によってコスト削減にもつながることが、この比較によって分かると思います。」
BUS-5の出力例
設計前の躯体数量も簡単に算出
- 「設計の業務というのはコンサルティング業務なので、“いつまでに”“どういうものを”“いくらでつくる”というのが、設計に要求される3つの大きな要素で、その要素の大事な1つである“いくらでつくる”ということを、設計が終わるまで放っておくことが多いようですが、コンサルティング業務の観点からするとなっていないように思います。
BUS-COSTの数量計算結果
賃貸マンションを建設する会社から、月5件程度ですが、設計前にいくらぐらいでこの建物ができるかコストを出してほしいと依頼がありますので、数量を出すためにBUS-COST※を使用しています。
BUS-COSTがどこの数量を拾うのか把握していますので、パラペット、手すりなど拾うことができない部分は適切に手で補正をしたり、割合で入力したりします。それでも本当に設計するとだいたい数量があっていますので、非常によくできている製品だと思います。」
- BUS-5は、改正された建築基準法に対応し構造計算をトータルにサポートする構造計算ソフトです。任意軸、中間節点自動作成機能により構造骨組の形状や配置を忠実にモデル化する機能と優れた解析により、モデル化に関する悩みが解決します。RC/SRC/S造建物の許容応力度等計算、保有水平耐力計算を一連して行います。種々の検証法による構造安全性の確認や、基礎構造と上部構造を一体として計算することができます。もちろん、構造計算書や設計図書などの提出書類をスピーディーに作成できます。また、ST-Bridge形式ファイルのエクスポート機能により、BIM関連ツールへのデータ転送もできます。
平成19年6月改正建築基準法対応、(一財)日本建築センター性能評価中
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