【限界耐力計算法と動的解析】

2000年6月の法改正で限界耐力計算法が導入されました。
本計算法は建物を等価1質点モデルに置き換え、応答スペクトル法の考え方に
基づいて、建物の周期から建物に生じる地震力を求める方法です。

<応答スペクトル法>
ある想定された地震動に対して、減衰定数を一定として、周期の異なる建物に
対して動的解析を行い、それらの最大応答値と周期の関係をグラフ化したもの
を応答スペクトルと言います。応答スペクトル法ではこの応答スペクトルを用
い、動的解析を行わずに建物の周期が判れば最大応答値を予測することが可能
です。建築基準法施行令第82条の6では、減衰定数5%における周期-応答
最大加速度の関係を表した応答スペクトルが与えられています。

<2段階の地震レベルを想定>
施行令第82条の6において損傷限界耐力時と安全限界耐力時の2段階の地震
レベルが想定されています。

<損傷限界耐力>
建物がおよそ50年に1回程度発生する地震、すなわち存在中に遭遇する可能
性の高いレベルの地震を想定しています。損傷限界耐力時の地震力に対して部
材が許容応力度以下になるように設計することが要求されています。

<安全限界耐力>
およそ500年に1回程度の地震、すなわち建物存在期間中に遭遇する可能性
が低く極めて稀に生じる地震が想定されています。安全限界耐力時の地震力が
保有水平耐力以下であり、かつ層崩壊を生じないよう設計することが要求され
ています。

<限界耐力計算の特徴>
想定されたレベルの地震動での建物の変形、応力状況を評価できる点において、
従来の許容応力度法等に比較すると精度が高い設計法と言われています。また、
限界耐力計算は耐久性の項目を除き仕様規定の大半を適用しないので、設計者
の意図がある程度反映される設計法といえます。その反面施行令、告示で示さ
れた関係式を理解するには、振動理論に関する基礎知識を要求される点などか
ら、限界耐力計算は理解することが難しいと言われています。

<静的増分解析が必要>
実際に限界耐力計算を行うためには、静的増分解析システムが必要になります。
それは損傷限界耐力時・安全限界耐力時ともに、静的増分解析から建物の層せ
ん断力(Q)-層間変位(δ)を求め、等価1質点モデルの代表せん断力-代表変位
から損傷限界耐力時及び安全限界耐力時の周期を求めて、その周期から建物に
作用する地震力と変位を求めるためです。代表せん断力-代表変位が求まると、
施行令、告示に提示された式を用いて限界耐力計算を進めることができます。

<結果の検証方法と当社プログラム>
適用範囲などに関する資料・研究が少ないことを考えると、解の妥当性を検証
するために、応答スペクトル解析や動的解析を用いて検証することが望ましい
と思われます。

限界耐力計算はBUSシリーズの「限界耐力計算」オプション(BUS2.5、
U2が必要です)、動的解析はSNAP、SNAPーLEで計算することがで
きます。