コラム クロソイドの雑学
  • Last Updated 2013/04/26

開発コラム  クロソイドの雑学

コラムのページに戻る   クロソイドの設計と作図

クロソイド曲線(clothoid curve)とは

クロソイド曲線は、曲率( 曲線半径の逆数)が曲線長に比例して一様に増大する螺旋状の曲線です。
コルニュ(Cornu)の螺線やオイラー螺旋とも呼ばれています。
また、車の速度を一定としハンドルを一定の角速度で回したときに車が描く軌跡として知られています。
実際の設計では路線の直線部分と円弧曲線部分をつなぐ緩和曲線としてクロソイドの一部を利用します。


カーブの設計


直進区間→円弧区間→直進区間というカーブを運転する場合は、円弧の始まりと終わりでハンドルを一気に切らないといけません。
このハンドル操作にはかなり負担がかかります。
一方、直進区間→クロソイド区間→円弧区間→クロソイド区間→直進区間というカーブでは、
直進区間からクロソイド部に入ると一定の角速度でハンドルを切り続け、円弧に沿って走るときにはハンドルを切ったまま固定しておき、
次にクロソイド部に入るとハンドルを一定の角速度で戻すというハンドル操作になります。
このように道路の設計ではカーブでのスムーズなハンドル操作を可能にするためにクロソイド曲線が採用されています。
また、高速道路ではクロソイド曲線の方が円弧カーブよりも先を見通せるので心理的に安心でき、安全に車を走らすことができます。
このようにクロソイド曲線は車の安全のためには欠かせない曲線です。


高速道路とクロソイド

高速道路にクロソイド曲線 (緩和曲線)を取り入れたのはドイツのアウトバーンが世界で最初だそうです。
クロソイド曲線が日本で最初に道路設計に導入された場所は国道17号線三国峠だそうです。
(高崎河川国道事務所のホームページの「群馬の道づくり」より)
現在は日本を含む世界中ほとんどすべての高速道路がクロソイド曲線を導入しています。
しかし、唯一イタリアだけは一部の古い路線に「緩和曲線のない直線からいきなり円弧」という高速道路が残っているそうです。


クロソイドは道路だけ?

等速で走行しながらハンドルを等角速度で回すと、走行軌跡はクロソイドになることから、クロソイドは道路に非常に適していると言えます。
しかし、道路だけでなく鉄道にも適用されています。
鉄道では一般的には3次放物線またはサイン半波長逓減曲線が使われますが(*1)、 曲線半径が小さい場合にクロソイドが使われているケースもあり、地下鉄や民営鉄道で実際に使われているそうです。
これ以外にも、クロソイドはロードコースターのカーブ区間、ジェットコースター、自動車のバネ断面などさまざまな分野で使われているようです。


クロソイドの主要点の略号

クロソイドの要素記号のクロソイド始点・終点に使われている KAとKEは何の略でしょうか?
一般的に、多くの線形要素の略号には英語の略が使われています。
BC:Beginning of Curve(円曲線の始点)
EC:End of Curve(円曲線の終点)
BP:Base Point(線形の起点)
EP:End Point(線形の終点)など)
しかし、KAと KEはドイツ語で、
KA:Klothoide Anfang(クロソイド始点)
KE:Klothoide Ende(クロソイド終点)
という意味です。
さすが、クロソイド本場のドイツ・・・と思っていたら、最近のドイツでは
UA:Ubergangsbogen-Anfang
UE:Ubergangsbogen-Ende
を多用しているそうです。 DRA-CADではウムラウト表記は難しいので KA,KEを使ってください。


クロソイドの由来

ギリシャ神話には運命を決める三人の女神がでてきます。
運命の糸を紡ぐ女神: クローソ(Clotho)
運命の糸の長さを計る女神:ラシケス (Lachesis)
運命の糸を切る女神: アトロポス(Atropos)
クロソイドは糸を紡ぐ女神クローソから来ているそうです 。

女神クローソの画像を見たい方は、 こちらをご覧ください。
立っている女神の左からアトロポス、ラシケス、クローソです。


*1)将来は3次放物線またはサイン半波長逓減曲線のコマンドも作ろうと思っています。
*2)東京23区の交通網地図はCraftMAP(http://www.craftmap.box-i.net/)を利用させて頂きました。