BUS−2.5 Q&A集
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Q.418

フレーム部分・耐力壁部分にそれぞれ釣合よく水平力を負担させる方法はあり
ますか?
 

A.

耐力壁は柱に比べて剛性が極端に高いため、剛性計算による場合は応力が耐力
壁に集中することはさけられません。
柱、耐力壁の形状・寸法を変えないで柱、耐力壁が負担する水平力の負担率を
変えるには、以下の二つの方法が考えられます。
   
@の方法
 耐力壁の剛度を計算する代わりに付帯柱の剛度を耐力壁の負担する水平力が
 標準の柱の任意倍になるように調整します。例えば左右に付帯柱を持つ1ス
 パンの耐力壁に標準柱の10倍程度の水平力を負担させたい場合は、左右の付
 帯柱の剛度をそれぞれ標準柱の5倍とします。ブレースの断面積は耐力壁と
 認識される最小値(例えば1p2程度)とするのがよいでしょう(FGK、
 FCK、FBAレコード)。但し、この場合の耐力壁の断面計算は通常の耐
 力壁の場合とは異なり、付帯柱は一般柱として計算し、耐力壁としては壁板
 部分について計算します。柱には標準柱の任意倍したせん断力が作用してお
 り、壁板に作用しているせん断力は比較的小さな値となっています。付帯柱
 と壁板部分に作用している水平力を合計し、耐力壁としての断面計算を別に
 行う必要があります。
 
Aの方法
 ある層での耐力壁と柱の負担する水平力を見当づける目安として、耐力壁と
 柱の横力分布係数DW、DCの比と耐力壁の剛度修正率βおよび柱の負担する
 水平力の割合の関係を表418ー1に示します。柱の水平力負担率は対数目盛に
 なっています。
 表の見方は
   DW/DC=1 β=1.0 のとき 柱の負担率は50%
   DW/DC=4 β=1.0 のとき 柱の負担率は20%
   DW/DC=4 β=0.5 ならば 柱の負担率は33%
 となります。
 βを0.1にしたとしても柱の水平力負担率はβを1.0とした時の0.1倍とはな
 らないことに留意して下さい。
 柱、耐力壁の横力分布係数DC、DWはせん断剛性だけを対象とすれば次式に
 より求めることができます。
 
        n  12E・I
     DC=Σ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄          (a)
           h3
 
        m G・t・
     DW=Σ  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄          (b)
           κ・h
 
      n:ある層における柱の数(付帯柱は含まず)
      m:ある層における耐力壁の数
      E:コンクリートのヤング係数
      G:コンクリートのせん断弾性係数
      h:階高
      t:壁厚
      κ:壁の形状係数(1.2)
      β:せん断剛度修正率
 
 実際の建物の設計ではDC、DWはせん断剛性の他に曲げ、軸方向、場合によ
 っては回転などの剛性も考慮されます。従ってこの表の関係による柱の水平
 力負担率とは異なってきます。
 表 418-2は同じ建物に同じ壁量をもつ図418(a)、(b)、(c)の形状の耐力壁を
 配置し、βを1.0として応力計算したとき実際に各耐力壁と柱が負担した水平
 力の分担係数比(K1=DW1/DC1)を、 式a、bで計算した耐力壁と柱の
 水平力分担比(K=DW/DC)の値で除した数値を表したものです。
 壁高/壁幅の値が大きい壁、一枚の壁では上層になるにつれて、回転を考慮
 しない場合よりは考慮した場合の方が数値は小さくなつています。せん断剛
 性だけでDW/DCが決まるとした場合は全て数値は 1.0となる筈ですから定
 性的には、この様な周辺条件によって耐力壁の剛性は変化することをしめし
 ています。数値が1.0を超えている箇所は、耐力壁のせん断剛性が上昇した
 ものではなく、柱の水平剛性が軸方向力や拘束条件の変化によって相対的に
 低下したものと考えられます。
 βを1.0として応力計算した場合でも耐力壁のDWはすでにその壁のもつせん
 断剛性に表418ー2の数値をβとして乗じた値に変化していることになります。
 表418ー1を用いβを指定する時の参考にしてください。
 
 

 
図418 壁の形状
 
表418-1 耐力壁のβと柱の水平力負担率
 
 

 
表418-2 耐力壁の水平分担比の変化(K1/K)
 
K1:耐力壁に曲げ、せん断(回転)剛性を考慮したときのDW/Dc
K :耐力壁にせん断剛度のみを考慮したときのDW/Dc