開発コラム サインの視認性
  • Last Updated 2013/08/21

開発コラム サインの視認性

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「サイン」は「目印、表示、標識」などの総称で、人が行動するために必要なさまざまな情報を伝える符号です。
街や建物をわかりやすく案内し、すべての人が自在に活動できるような環境作りにサインは大きな役割を担っています。


サインの伝達情報

サインの伝達情報には「視覚によるもの」「触覚によるもの」「聴覚によるもの」の3種類があります。

視覚情報サイン 文字、図、記号、色、形など
触覚情報サイン 点字、浮出文字、立体形状、感触、温度、振動など
聴覚情報サイン チャイム音、音声、メロディ、補聴システムなど

このコラムでは視覚情報サインの視認性についての基本的な考えとポイントを紹介します。
※以下、「サイン」は「視覚情報サイン」を指すものとします。


サインの機能種別

サインを機能によって大別すると、次の4種類があります。

位置サイン 施設などの位置を告知するサイン
施設の名称だけではなく、案内用図記号やロゴマークなどを用いて示す場合もあります。
誘導サイン 施設などの方向を指示するサイン
矢印と施設名称・エリア名称などを組合せて表示します。
移動しながら見ることが多いので、短時間で利用者が読み取り進行方向を判断できるよう、単純明快性が重要となります。
歩行者などによって遮られない場所に設置します。
案内サイン 街区や建物の全体像を知らせるとともに現在地との位置関係を案内するサイン
比較的多くの情報量を盛り込むことができます。
地図表現の場合、地図の上方向が進行方向と揃っていると理解しやすくなります。
設置してあることが分かりやすく、立ち止まって読むことが可能な場所に設置します。
規制サイン 利用者の行動を規制するサイン
禁煙や進入禁止など、直感的に利用者に知らせる必要がある場合に設置します。

サインの掲出位置

誘導サインや位置サインは遠くから移動しながら視認できるように、空間上の高い位置に、表示面を動線と対面するように掲出する必要があります。
案内サインは、内容をしっかり確認できるように、流動を妨げない位置を工夫しつつ、利用者の視点高さに掲出する事が求められます。


サインの取付方法

取付方法によってサインを大別すると、次の5種類があります。

吊下型 天井から吊り下げる方法で、天井直付型やペンダント型等があります。
高い位置に設置可能なので流量の多い場所での設置に適しており、混雑時や遠距離からの視認性に優れています。
車いす使用者など目線の低い人にも配慮が必要です。
壁付型 壁に平付けにする方法で、埋込み型、半埋込み型、壁外付型等があります。
主に近距離から見る建物サインの掲出方法であるため、近づきやすさを考慮した設置場所を決める必要があります。
施設名などその場所の名称を示す場合に多く用いられます。
壁や扉面に正対した位置で読むことを前提としている地図や詳細な案内などに適しています。
壁面に直接表示する場合もあります。
扉へ取り付けるサインも同じ特長となります。
突出型 壁や柱から、通路方向などに突出して取り付ける方法です。
高い位置に設置可能なので流量の多い場所での設置に適しており、混雑時や遠距離からの視認性に優れています。
比較的狭い通路に面した施設の入口などを強調して表示する際に用います。
自立型 路面上に取り付ける方法で、固定型と可搬型があります。
主に近距離から見るサインの掲出方法であるため、近づきやすさを考慮した設置場所を決める必要があります。
特にサインの存在を強調する場合や、他に支持方法がない場合に用います。
床面型 床面に取り付ける方法です。
複雑な移動経路を示す場合や確実な規制が必要な場合など、壁付型等の他サインと組み合わせて使用することができます。
誘導ブロックや避難誘導灯などが代表的です。
文字や図形の表示も可能ですが、摩耗することや交通量の多い場所では障害となることも考慮しなければいけません。

図記号と文字の大きさ

図記号に文字を併記する場合、図記号と文字が同じ視距離から読めることが原則となります。
文字の可読性は、文字の大きさに深く関係します。
判読に必要な大きさは、利用者の視認距離と移動速度によって決まります。
また、書体や表現方法、周辺環境など様々な条件によっても左右されます。
視距離に必要な図記号・文字の大きさのめやすを以下に示します。

※参照 ひと目でわかるシンボルサイン 標準案内用図記号ガイドブック:交通エコロジー・モビリティ財団


遠くから視認するサインの掲出高さ

遠くから視認するサインの場合は、
①視認者の視界の前方に他の通行者がいる場合、その通行者より上で、遮蔽するものがない見やすい範囲となる。
②車椅子からの視点は、立っている人より40cm程度低いので、前方の人によって遮られる範囲が大きくなる。
という事項を考慮すると、
遠くから視認できるサインは、視認位置から仰角10度より下の範囲内でできるだけ高い位置に掲出することが望まれます。
また、視認位置から仰角10度以下の範囲内に収まる高さを考えると、サインの掲出高さ(床面からサイン下端まで)は、
・本体の天地が300mmの場合「2500mm前後」
・本体の天地が400mmの場合「2700mm前後」
が適当と考えられます。
この数値は、車いすに座った場合にもあてはまります。

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近くから視認するサインの掲出高さ

近くから視認するサインの場合は、
①立っている人と車いす使用者が共通に見やすい範囲を考える必要がある。
②行動範囲に制約がある車いす使用者をより尊重する。
という与条件を考慮すると、
床面からサイン表示面の中心までの高さは、双方の視点の中間である1350mmより、1250mm程度の高さにするのがより望ましい設計になります。
(例えば、1350mmを採用した場合、1m四方の地図の上部は、車いす使用者には判読が困難になります。)

また、案内サインなど情報量の多い大型サインを掲出する場合、誤読率が増加する視方角(45度)の限界を超えないように、
想定する視認位置から水平方向、垂直方向の視方角を考慮し、サインの幅や掲出高さ、面の傾きなどを設定することが望まれます。


見上げる位置にあるサインの掲出高さ

見上げる位置にあるサインの場合は、
車いす使用者の見上げる角度を考えると、
高くてもサイン上端までの高さが2700mm程度、サイン下端までの高さが1700mm程度にするのが適当と考えられます。


室名表示や誘導表示などの掲出高さ

建物内の通路などに設置する室名表示や誘導表示は、サインの大きさにもよりますが、以下に示す高さ程度が適当と考えられます。


サインの設置方向

サインの設置方向は進行方向に対し平行に設置することを基本とします。
T字路の突当り部で設置場所を確保できる場合は、主要動線の進行方向に対し直角に設置する事が有効な場合もあります。
また、誘導ブロックの曲部を可能な限り少なくする設置方向も重要です。


サインの保守・管理

「サイン」は視認性を考慮して適切な大きさや位置に掲出することが必要ですが、それと合わせて正しい情報を掲出する必要があります。
そのためには継続的な保守・管理が必要になります。
構造システムグループでは、駅施設のサインと設備の保守・管理を行う「まるごとサイン」を開発・販売しています。

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